「使用人を通してみる部族意識」出たっきり邦人@ケニア第1回

このエッセイは3人の子供を連れてケニアに住んでいた母が、2005年4月に書いたものです。

「出たっきり邦人・中南米・アフリカ編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。


ケニア共和国・ナイロビ発〓

ケニアよもやま話 第1回 「使用人を通してみる部族意識」

はじめまして。これからしばらく出たっきり邦人のライターとしてケニアからのエッセイを送らせて頂くことになりました、のこです。宜しくお願いします。

ケニアに2004年12月末に赴任し、もう2ヶ月が経ってしまいました。

4・6・8歳の3人の子供との引越はそれなりに気苦労の多いものではありましたが、白髪は増えてしまったものの、どうにかこうにかこうしてエッセイを書けるまでになりました。

今回は、身近な人からの部族間意識について書こうと思います。

ケニアの人口は約3080万人(2001年推定)で、主要42部族からなるアフリカ人が98%占め、その中でもキクユ族(21%)、ルヒヤ族(14%)、ルオ族(13%)、カレンジン族(11%)、カンバ族(11%)、そしてかの有名なマサイ族はわずか2%を占めるのみ。

そして、一番身近にいる現地人はキクユ族の運転手と、カンバ族のお手伝いさん。
この運転手がまたおしゃべりでのせるとどんどんしゃべるから、一般現地人の考え方を垣間見るにはいい相手。
この3ヶ月の間で彼の話したことの中で一番ショックなのはやはり彼のマサイ族に対してのコメントでしょう。

このケニアの首都ナイロビ。
首都とはいうものの、とても緑が多く、道路の穴もかなりなもので、信号も3箇所くらいにしかないような田舎の首都。以前マニラにも住んだことがある私たちは来た当初この田舎ぶりにほっとしたものです。

毎朝通る道もよくマサイ族が牛やヤギを放牧し、もう見慣れてしまったほどですが、うちのおしゃべり運転手がある日、「あれはマサイ族だ。彼らはやりなどの武器を持っているが警察に捕まらない。何でか分かるか?」と聞いてくるので、「彼らの伝統文化を尊んでいるからでしょう?」と、いうとすかさず、

「いいや、彼らは馬鹿だからだ。もし、俺が小さなナイフでも持っていたらすぐに警察に捕まってしまう。それは、俺がそのナイフを使って悪いことをするかもしれないと警察が思うからだ。でも、マサイ族は馬鹿だから武器を使ってそういうことをすることも考え付かないんだ。だから彼らは槍(やり)をもっていてもつかまらないんだ」などと、いうではないですか。

そう、ここにいると何となく感じます。首都圏の現地人たちのマサイ族に対する差別を。

マサイ族の中にも高い教育を受けて政府の主要高官になっている人たちもいます。
そういう人たちは、彼曰く「modern masai」だそうです。

でも、そういう運転手の出身部族のキクユ族、なんだかあまりいいイメージはもたれていないみたい。
カンバ族のお手伝いさんいわく、「キクユ族はいい加減で、物も盗む。カンバ族とルヒヤ族の間の結婚はよくあるけど(そういう彼女のご主人もルヒヤ族)、キクユ族との結婚はあまりない。離婚のときも身ぐるみはがして持っていくし、彼らは私たちの間では怖がられているんだ(と、いうか嫌っているのでしょう)」ですって。
そして、そんな部族間の性格の違いは、たった3ヶ月いるだけの私にも何となく伝わってきます。

そして、先日の新聞にも「お手伝いさんとして人気のある部族はカンバ族とルヒヤ族で、彼らは礼儀正しく、働き者とされている」と、書いてありました。
そしてケニア人の知り合いは「絶対にキクユ族のお手伝いだけは雇わない」と、豪語していますし、実はうちの運転手(キクユ族)の調子のよさには私は既に閉口しており、長くは雇うことはないでしょう、きっと。そして、カンバ族のお手伝いさんは、きちんとしていて非常に気に入っているのです。
もちろん個人差があるのでしょうが、育った環境・文化の違いは、少々あるような気がしております。
でも、ケニアの国名の由来でもあるジョモ・ケニアッタはキクユ族ですし、キクユにも、またどの部族にも優れた人はいますよね。

また、これから長く暮らすにつれて、違った感想を持つのかもしれないですけど、とりあえず、この短期間で感じた部族間意識をリポートさせてもらいました。
はじめは、みんな同じケニアの国民なんだから、仲良くすればいいじゃない、なんて思っていましたが、そんな簡単にはいきませんね。