「学校選択」日本人学校から現地校へ転校させたワケ。出たっきり邦人@ケニア第5回

このエッセイは3人の子供を連れてケニアに住んでいた母が、2005年9月に書いたものです。

「出たっきり邦人・中南米・アフリカ編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。

ケニア共和国・ナイロビ発〓

ケニアよもやま話 第5回 「学校選択」

夏休みは日本に久しぶりに帰り、少々の旅行もして、心機一転、9月2日ナイロビに帰ってきました。
休暇中に、国立公園に旅行中の邦人が強盗被害にあったというニュースもあったようですが、
今回は子連れ出たっきり邦人にとって重要な子供の学校選択についてのエッセイにすることにします。

ナイロビ暮らしも半年が過ぎ、4月より真ん中の子も一番上と同じく日本人学校に入学。
3番目は相変わらずブリティッシュスクールの幼稚部に通っています。
過去半年を振り返り、子供の成長具合を振り返りながら、夫とこれからの教育方針について話し合い、今までの方針を、なんと、変更するにいたりました。
今回は、駐在員家族の一例として、これまでの、そしてこれからの試行錯誤ぶりをお知らせしようと思います。

これから数年海外生活をし、いつかは日本に帰るうちの子供達はいわゆる「帰国子女」というものになってしまう…。
帰国子女という言葉から、皆様はどういうイメージを持たれるのでしょうか?
外国語ぺらぺらで、外資で大活躍?いやいや、そういう人ばかりではないですよね。

私たち夫婦は、帰国子女の多い都内私立大学出身。いろんな帰国子女を見てきました。
自分をしっかりと持った同年代とは思えないほど大人びた子もいました。
日本語を話すのに苦労をしている子もいました。英語も日本語も中途半端、でもプライドだけは人一倍の子もいました。

そして、その後いろんな人との出会いもあり、日本でずっと育った人でも驚くほどの語学力の持ち主が結構いることも分かりました。
そして、語学力だけでは今の世の中やっていけないこと。
要はその人の中身がなければ、語学力もたいした意味をなさないことも感じております。

そして、子供達には「人間的に豊かな魅力的な人になってもらいたい。もし将来難しい分野の勉強をすることになっても理解できるよう、思考力のある人に育ってほしい。そのためには、日本人であるからには日本語で芯をつくり、必要ならば後で英語に置き換えればいい。」と、思っております。
それは、今までもこれからも変わらない方針です。
そしてケニアに転勤になったときも、迷わず日本人学校へ転入させました。
でもでもでも…、そこで目にする現実は…。

勉強は日本の延長だから、楽々。少人数教育で、フォローもばっちり。
生徒達もみんな素直で優しく、転入生の子も暖かく迎えてくれて、うちの子供たちは毎日学校に通うのが楽しくて仕方がない。
帰ってきてもコンパウンドにすむ日本人学校の子供達と夕方遅くまで遊びほうけ、子供達にとってはケニアに住んでいるのを忘れてしまうかのような状況。

そう、子供って意外と簡単に言葉を覚えるわけではないという現実に直面してしまいました。

このままでは、上の二人は挨拶程度の英語しか分からない状況で、3年後に次の任地(現時点ではまったく不明)に行くことになってしまう。
一足先に、日本人学校のないところに転勤になった友人達からは、やはり子供の苦労話が知らされ、それは学年があがればあがるほど大変そう。
まだ、これから5年以上、もしかしたら7~8年もの海外生活が待っている私たちにとって、いつかは日本人学校のないところに引越す可能性は大。

それならば、今、日本人学校の勉強にも余裕がある低学年のうちに英語環境に慣れさせるのも必要かも…。
日本人学校から出るということは、つまり日本の教育はすべて家庭でやることを意味するのだけれど、それも低学年のうちから始めれば何とかできるかもしれない。
日本語と英語のどっちもが、中途半端に終わることだけは避けたいし、それならばもちろん日本語重視の教育をさせるのはやはり方針としては変わりません。
でも、今のゆとり教育の立て直しを図ろうとしている文科省のカリキュラム、そして普通は1クラス40人弱で進める学習内容くらいならば、家で何とかなるはず…、などなど、いろんな考えがぐるぐる回ります。

勉強以外の要素としては、ここでは日本人学校の規模が小さく、小中併せて37名、付き合う人も限られ、放課後活動はない。
人数規模の大きい、インターナショナルスクールに入ると、放課後の活動も「乗馬」「陶芸」「お料理教室」「空手」「バレー」など、この治安の悪いナイロビにあって、遠くまで送り迎えしなくても学校より参加可能。
子供にとっては、今が彼らただ一度の子供時代。出来ればいろいろな体験をさせてあげたい。
そしてせっかく、海外にいるのだから、世界にはいろいろな人がいることも直に感じてほしい。
日本人村にこもってばかりでは、日本にずっといるよりも、もしかしたら人間的に幅がでないかも…。

うちの子達がもし日本の教育内容をこなすのに精一杯だとしたら、そして私たちがそう思っているとしたら日本人学校を続けたほうがいいでしょう。
インター校に手を出し、両方が中途半端になるようなことは避けるでしょう。
でも、私たちもご他聞に漏れず親ばかだったようで、うちの子供達の能力を信じてみることにしました。
きっと、彼らなら、日本の教育内容をこなした上で、プラスアルファーのことをインターで学んでくれるはず、と、信じてみることにしました。
以前は「絶対に日本人学校」と、盲目的に思い込んでいた私達からしたらかなりの方向転換ですが、後悔しないよう親の私たちも努力しようと思います。何しろ、今まで教育は人任せ、でしたから。

これをきっかけに、もっと子供に関わることになると思います。
お母さん先生、になったら、これからは挫折感も多々味わうことになるでしょうが、将来子どもに後悔させないように頑張らなくてはね。
今は、子供以上に不安がいっぱいの私ですが、3人の子供の未来を想ってひとふん張りしてみます(精神的にも、経済的にも)。