外国人に日本の宗教観をどう説明する?日本人の神様の捉え方

多くの日本人は、クリスマスもお祝いするし、ハロウィンも楽しむし、結婚式も教会であげるのに、年末年始は仏教的だし、仏教的な葬式も出ますよね。
こんな一見曖昧な宗教観なので、外国人に日本人の宗教観を説明するときにどういう言い方をすればいいのか迷いませんか?

単一民族だということもあり、日常的に宗教のことについて考えることがなかなかありません。
だからこそ、自分たちの宗教観をいまいち理解していない人も多いでしょう。

私は小さいとき、当時通っていたブリティッシュスクールで「あなたの宗教はなに?」と聞かれたらとりあえず「仏教」と答えなさいと親に言われていました。
小さいときは相手も子供ですし、ちゃんと説明してもわからないので「仏教」というシンプルな答えで良かったのですが、成長するにつれ疑問が湧き始めました。

「この曖昧な日本の宗教観はなに?」「どう説明すればいいの?」などの疑問に答えていきましょう!

八百万の神」という概念:欧米との違い

キリスト教イスラム教などは一神教、神は一人しかいません。
一方、日本では「八百万の神」(やおよろずのかみ)という概念があります。

これは、動物や植物から、山や森などの自然、日用品にまで神が宿っているという考え方です。
命がないものも、敬意を持って扱えば私たちの役に立ってくれると考えられています。

八百万の神は、唯一神と違い、人々が行うべきことや、どう生きるべきかということを命じません。
神は絶対的な存在ではなく、ただ敬うべきものなのです。

外国人にどう説明するか?:「神≠God?」

絶対的な神がいるわけではなく、人々をマインドフルにしてくれる八百万の神がいるだけなのが日本の宗教観です。
だから、クリスマスなどのキリスト教のイベントを抵抗なく祝うことができるんです。
色々な神がいるということを受け入れることができる考え方なんですね。

英語で外国人にこの日本人の宗教観を説明するとき、「神」という意味の単語「God」を使うと思います。
でも、「God」という言葉から連想されるイメージと日本の神々のイメージが違っているかもしれません。

例えば、「天皇」は英語に訳すと「Emperor」ですが、なんだかしっくりこない人もいるのではないでしょうか?
「Emperor」というと大きな政治的が権力がありそうですが、天皇はあくまで日本の象徴です。

こんな風に、言葉は文化的な背景と結び付けられて捉えられますから、辞書の上では「神」と「God」が同じ意味でも、受けるイメージが受け手によって変わってきます。

日本の「Kami」は善悪を決めたりする絶対的な権力があるわけではない「Fairy」(妖精)に近い存在だ、という説明の仕方はどうでしょう?Godと言われるより、八百万の神のイメージがつきませんか?

文化が違うと、なかなか正しい説明がしにくいですよね。
下手すると自分たちの宗教があるのに、他の宗教のイベントもお祝いする軽薄で基盤のない考え方だと捉えられてしまいがちでしょう。
根本的に「神」の概念が違うんだ!ということを主張してみるといいかもしれません。
その際、「God」ではなく「Kami」と日本語をそのまま使って、定義してみるところから始めてみるのも一つのやり方だと思います。

日本人の考え方への影響

ものを大切に扱う

生命、自然、日用品などに神がいるという八百万の神の概念が、日本人の考え方に及ぼした影響を考えてみると結構面白いんです。

命がないものも、敬意を払って扱えば人間の役に立ってくれることがあるという考え方も、八百万の神の概念から来ています。
その一方、私たちが不注意にものを扱うと、それらのものは恨みを募らせ仕返しをしてくることがあるという考え方もあります。心無い扱いをされたものが怪物になって町を歩くシーンが「百鬼夜行絵巻」に描かれています。この怪物は「付喪神」または「九十九神」(つくもがみ)と言われています。

こういう考え方が日本人に無意識に植え付けられているため、ものを大切に扱ったり、キレイに保ったりする人が多い傾向にあるのだと考えることができますね。

また、「トイレの神様」という曲が一時期流行ったのを覚えていますか?

♪トイレにはそれは それはキレイな 女神様がいるんやで
♪だから毎日 キレイにしたら 女神様みたいに べっぴんさんになれるんやで
こういう曲です!

この曲も、トイレにも神様がいるという考えが違和感なく日本人に受け入れられるから流行った曲ですよね。
普段意識していなくても、身近なものにも神様が宿っているという考え方が日本人には染み付いているんです。

幸せや生きがいの捉え方

今、海外でも「IKIGAI」(生きがい)という言葉が広がってきているのを知っていますか?

脳科学者の茂木健一郎さんが英語で執筆した「IKIGAI ~日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣~」(英語ではThe Little Book of IKIGAI ~The Essential Japanese Way to Finding Your Purpose in Life~)という本が話題になっているんです。

この本の一部に、八百万の神の概念がある日本では、
「人生はたくさんの小さな物事のバランスでできている」と書いてあったのが印象に残りました。

対照的に、結婚すれば、大金持ちになれば、この大学を出れば、こんな見た目になれば「幸せ」という考え方は「フォーカシング・イリュージョン」と呼ばれています。

「フォーカシング・イリュージョンを持つことで、あなたは自分自身で不幸を感じる理由を作っている。もしも、不幸が、幸せの必須要素がなにもない空白だというなら、その空白は、その人の偏った想像力が作ったものである。
幸せの絶対的公式などないのである。-それぞれの特殊な人生の条件が、それぞれの方法で幸せの基礎となり得るのだ。」

茂木健一郎著、恩蔵絢子訳、2018、株式会社新潮社、『IKIGAI 日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』、168頁)

「<生きがい>と幸福は、自分を受け入れることからやってくる。他者から認められることは、確かに一つのボーナスである。しかしながら、もしも間違った文脈に置かれれば、それが自分を受け入れるという極めて重要なことを邪魔してしまうこともある。」

茂木健一郎著、恩蔵絢子訳、2018、株式会社新潮社、『IKIGAI 日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』、179頁)

自分自身を受け入れて、何か幸せになるための条件を探すのではなく「小さな物事」を幸せと捉えられるようになるといいですよね。
日本人の宗教観は、小さな物事を大切に考える文化を育ててくれているのでしょうね。

▼留学したら自分を受け入れて、もっと幸せを感じられるようになった話▼