「虐殺事件はなぜ起きる?」出たっきり邦人@ケニア第4回

このエッセイは3人の子供を連れてケニアに住んでいた母が、2005年7月に書いたものです。

「出たっきり邦人・中南米・アフリカ編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。

ケニア共和国・ナイロビ発〓

ケニアよもやま話 第4回 「虐殺事件はなぜ起きる?」

先日、7月初旬、ケニアの北部にあるマーサビットという町の郊外で、部族間抗争による虐殺事件がありました。その後、ロンドンでのテロ事件があったせいか、それとも特に目新しい事件でもないのか、日本ではあまり報道されていないようです。

第1回目の出たっきり邦人で、ケニアには部族というものが、まだ色濃く残っていて、お互いの感情はあまりいいものを持ってはいないことを書きましたが、やはり田舎に行くともっと対立感情は激しくなるようです。
この虐殺の起きた地域では、以前から小競り合いはあったようで、数名が殺されたりする事件は、ぼちぼち起きていたようです。
それが、今回はその報復として、なぜか500名あまりの大勢で村を襲い、小学校も包囲し銃を乱射し23名の子供を殺し、その後、村にながれ、女、子供かまわず虐殺したようです。
それも、パンガといわれる「鎌」みたいなもので、まるで動物を殺すように次々に殺していったということです。総計89名が死亡、50名が負傷したといわれています。

なぜ、今回は500名もの大群か?
これは、どうやらエチオピアとの国境近くということもあり、エチオピア政府にゲリラ戦を繰り広げているオロモ解放戦線というゲリラも加わったということが言われています。

でもね、目撃者の証言として、今回虐殺をした人の中には、隣町の住人も含まれていて、過去にはよくその村を訪れていたとか。殺されていく子供の中には、相手の名前を呼ぶことのできる子もいたとか…。
島国でのほほーんと育ってしまった私にはまったく理解不可能で、思考回路が止まってしまいます。
知り合いを殺す?しかも子供?
そして、その子供達の中の生き残りが、何年後かにはまた同じ事を相手にするのでしょうか。

この国に来て、先進国と違っていると感じることのひとつは、mob justiceというものが認められているということ。これが、明文化された法律としてはないとは思うものの、人種的な性格に基づくものなのか、発展途上国では仕方のないことなのか…。

ここでは、レイプ犯は見つかれば殺される。
窃盗犯だって、死んだっておかしくないくらいリンチされる。
以前、路上で若者2人に思いっきり蹴られ、殴られている、貧しそうな人を見ました。
多分、近くのキオスクで盗みをはたらいてしまったのでしょう。
あの人は、あの後どうなったのか、今でもたまに脳裏をかすめます。
新聞にもよくあるのが、○○犯だと思われる人(死んでしまっているので確かめる方法なし)が、村人に捕まり、殺され、焼かれた、なんていう出来事。

それを読むと、いつも「どんな理由であれ、人を殺してしまったという村人の罪はどうなる?」という疑問。
法治国家では、ある事態が生じてしまったときは、それに対する処分は、法に基づいて、国家の力によって実現する必要があるはず。
個々人が勝手に、報復などをすると、そこにあるのは無秩序な社会ではないのか?ケニア法治国家ではないのか?今度、ケニア法をよく知る弁護士に会ったら聞いてみたいことです。

そして、こういうmob justiceが許されているからこそ、虐殺というものがなくならない理由のひとつだと思えてならないのですが、皆様はどうお考えですか?

もうすぐで、日本に一時帰国するのが楽しみです。やはり、安全が一番!