「マイノリティーとしての体験」出たっきり邦人@ポーランド第16回

このエッセイは3人の子供を連れてポーランドに住んでいた母が、2009年7月に書いたものです。

「出たっきり邦人・欧州編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。

ポーランドワルシャワ発〓
ポーランド便り 第16回 「ザモシチ、マイノリティーということ」

雨の多かった夏でしたが、やっと最近雨も少なくなり夏らしくなってきました。とはいえ、気温はなかなか30度に届かないですし、ふとすると薄手の長袖が必要なくらい寒くなりますので、気持ちのよい夏をすごしています。
我が家もそうですがクーラーがない家も多く、これでも大丈夫なのだから涼しいですよね。

今回は少し前にいった旅行のご報告です。
ワルシャワから車で2~3時間、ウクライナに向かって走るとルブリン、そしてザモシチという2つの街につきます。

ザモシチは一応世界遺産五稜郭に似た要塞都市です。とはいっても、ヨーロッパって結構いろんなところに城壁にかこまれた都市があるので、正直な感想は「またこれか」。
それにしても小さかった。旧市街の中心広場にあるレストランの一つで食事をしましたが、普通に地元民らしい人たちが集っていて、私たちがよそ者だということは一目瞭然。頼んでもいないのに、ウェートレスが英語ができないからといって、お友達客の一人がオーダーをとりにきたりしました。

一応私たち簡単なオーダーくらいはポーランド語でできるのにね。英語、使いたいんだろうな、と思って、相手に合わせておきましたが。
ここら辺の街って、中心に広場があってその近くに教会やお城があって、城壁に囲まれていることが多いです。
このザモシチの場合、お城は今政府のオフィスとして使われているとかで、観られませんし、その前にある教会の塔も登れるのですが、低いので景色を楽しむこともできません。

ルブリン、ザモシチでは、アジア人が珍しいので、かなりじろじろ見られました。3歳くらいの女の子にいきなり「チェシチ(こんにちは)」と握手を求められたり、なんだか視線を感じてちょっと窮屈。で、ザモシチのお話はここまで。

外国人が珍しいといえば、ワルシャワでも地方からのポーランド人の団体様に遭遇すれば、視線を感じる感じる。首都ワルシャワの象徴、外国人発見!って感じなのでしょうか。子供たちも学校の修学旅行のときに、「一緒にとって」と他の学校の団体客に記念撮影をされてしまった、とかいっていたし。
もちろん、こういう無害な経験ばかりではなく、たまには嫌な思いもしますよ。あからさまな差別みたいなものには一度もあったことがないですけど。

特に子供たち3人を連れているとなのかな?じろじろ見られる。「誰がお母さんなのか分からないんでしょ。アジア人、若く見えるからね。」なんて勝手に妄想を働かせているうちはいいです。
けれど、頭にきたのが、すれ違いざまに中国語っぽい響きのことばをいった後に、キャハハハ笑ったりされたとき。中国人か日本人かなんて分からないだろうから、それはいいとして、やっぱり「すれ違いざま」と「笑われる」ってところが嫌なのかな?
挨拶だったら普通相手の反応がもらえるタイミングでするでしょ。笑い方にも照れ隠しだか、そうじゃないかくらい分かるわよね、やっぱり。

というわけで、最近のそれは我が家の近所でジョギング中におきたので、2周目でまたその子達に会ったときに「日本人だから。わかった?」と話しかけておきました。そこがポイントではないのだけど、こちらが不快に思ったことは伝わったと思うんだ。うん。次はそんなことやらないようにね。
ひとりだったら無視してもいいのだろうけれど(でもひとりのときにされたことはないかも、何で子供と一緒だと言われるんだろ?)、子供には卑屈感を覚えさせたくなくて、不快感を相手に知らせることにしております、できる範囲で。それがいいことなのかどうかはわからないけれど。

思えば、ケニアのインター時代でも自分たちの鼻が他の子よりも低かったり、目が細かったりすることを、他の子たちにからかわれたりして、どうしてそうなのか聞いてきたこともあったな。
精神的に強く育つ過程だと思ってはいても、ひねくれちゃったりしないか心配。

今のところ大丈夫そうだし、12歳の長女、10歳の次女はもう何を言われても大丈夫そう。自分というものに自信が持てるようになってきたみたいです。
が、8歳の長男、ガラスのハートを持っています。まだ彼のガラスが歪まないように注意が必要。笑われても、自分に落ち度がないことを理解して、自分への自信が揺らがないようになるまで、あともう少し。珍しいアジア人だからということだけでからかうような人がいれば、私は戦いますよ。

海外生活が嫌になってしまうのは、こういうときでしょうか。