「世界中にいるポーランド人」出たっきり邦人@ポーランド第9回

このエッセイは3人の子供を連れてポーランドに住んでいた母が、2008年10月に書いたものです。

「出たっきり邦人・欧州編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。

ポーランドワルシャワ発〓

ポーランド便り 第9回 「世界のポーランド人」

みなさん気が付いていないだけで、もしかしたらポーランド人に会ったことがある人って結構多いと思うんですよ。

ポーランド自体はマイナーな国ですが、ところがどっこい移民勢力としてはかなりなものがあります。
顔が白人ですから、アメリカでもヨーロッパでも黙っていれば移民かどうかわからないし、その上、その国の言葉が上手だったら、もう本人がポーランド人だと言うまでは分からないでしょう。

アメリカには祖先までさかのぼって数えると、なんと1000万人ポーランド系の人がいるそうです。
シカゴは、ポーランド国外で一番ポーランド人が多い都市としてポーランドではよく知られていますが、2000年の国勢調査ではなんとシカゴの人口の7.3%を占める21万人がポーランド系らしいです。
これはどのくらいのポーランド人度かは分かりませんが、2世くらいまでかな?と思います。

というのも、ポーランド人を祖先とする人はシカゴに100万人いるといわれており、それこそ何百年も前に移民しているような人の子孫は国勢調査では「アメリカ人」と書くでしょうから。
もしこの100万人という数をそのままとると、ワルシャワについで大きい都市だとか。
だから、ワルシャワの次にポーランド人が多いのはシカゴだ、ということを言う人もいます。

かの有名なマーサ・スチュアートもポーランド系です。結婚前の名前は結構コテコテのポーランド名でした。彼女は国勢調査ではどういうように分類されるのでしょう?「アメリカ人」かな?
アメリカに大勢いるのですから、陸続きのヨーロッパにももちろんたくさん移民しています。
2004年EU加盟後にはどんどん人が流出して、ロンドンには現在12万人がいるとか。

2004年以降イギリス政府はEU新規加盟国の人たちを対象に、イギリスで労働する場合の登録制度を設けましたが、2007年6月までに登録した65万人中、43万人がポーランド人だったそうです。

何でそんなに移民するのかって?

やっぱり、給与格差でしょうね。
そうでなければ、家族もいて、食事もおいしく、言葉も通じる母国を後にする人はそんなに多くないはず。

去年、医者と看護婦の賃上げ要求ストライキが長期的にあって、市内の公園の外にテントなどをはって過ごしている人たちを見ましたが、確かに医者と看護婦の給料安すぎるかも。月給が看護婦500USドル相当、医者1000USドル相当らしいから、物価もどんどん上がっているこの国では生活も苦しいだろうな。

多分他の職業の給料もあまりよくないのでしょう。
外国人として暮らしている分には、周りの人たちは結構稼いでいますけどね。

うちにはお手伝いさんはいませんが、外国人家庭で働くお手伝いさんの中には自給約1000円の人もいますし、外国人が利用するレストランのウェイターなんかはチップで高給取りだと思いますよ。
でも医者とはいっても先進国の高給に見合うだけのレベルかどうかは分かりません。
この国の医大に通ったポーランド系カナダ人の話によるとかなりお粗末な設備、教育内容らしいので、いくらポーランドで「医者」の資格を持っていたとしても先進国のレベルではないのではないか、と怪しんでいます。

だから「自分の家族に何かあったら、この国では医療を受けたくないので、近隣先進国に移送してください」とは常々言っておりますが、移送先でポーランド人の医者に「担当医です」なんて言われたら、ショックかも。
時間さえ許せば、日本に移送してもらうのが一番かもな。病院食もおいしそうだし。
だから、ちょっとしたことでは病院には頼らない我が家です。おっと話がそれましたね。

空港などで耳を澄ましてみてください。
「ドーブジェ。ターク、ターク、タク、ターク。」と甲高い声で話しているのはポーランド人です。
今、出稼ぎでがんばっているポーランド移民の人たちからすれば、毎日ポーランドのスーパーで買い物をし、ポーランド語のテレビ番組がたくさんあり、ポーランド人に囲まれて生活している私たちはものすごくうらやましい存在のはず。

あたたかいジュレック(シチュー)やピエロギ(ゆで餃子のようなもの)を食べると、ポーランドに住むことができたのもよかったな、なんて幸せになります。
でもいつこの生活にさようならするのかは分からない駐在員生活。
そして一旦去ったら家族もいないこの土地にはなかなか来ることはないだろうし、そうすると私もみんなみたいに、「あー、ポーランドに帰りたい」と思って望郷の念に駆られるんだろうな、と今から移民モードです。

そう、出たっきり邦人は、移民生活の連続なのです。
だからこそ、今を楽しむ!さー、今日は何を食べようかな?