「身近すぎる銃撃事件」出たっきり邦人@ケニア第10回

このエッセイは3人の子供を連れてケニアに住んでいた母が、2006年4月に書いたものです。

「出たっきり邦人・中南米・アフリカ編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。

ケニア共和国・ナイロビ発〓

ケニアよもやま話 第10回 「銃」

ナイロビは世界でも有数の治安の悪い都市らしい。何とか無事に大ごとなくここでの任期を終えることが出来ますように、というのは、着任したときより絶えず思っていることのひとつ。

もちろん、「住めば都」なので、別にナイロビが嫌いなわけでもないし、基本的には善良な市民や国際色豊かな友達とともに、平和で楽しい毎日があるから、いろんなところに目をつぶれば家族で楽しく生活しております。

皆さん、銃声って聞いたことありますか?

今まで日本、アメリカ、フィリピンで生活してきましたが、銃声なんか聞いた覚えはありません。でもここに来てから、かなり聞きなれてきてしまいました。来た当初は発砲事件の話をしている友人に「タイヤのパンクの音と銃声の音の区別がつきませーん」なんて能天気に言っておりました私でも、最近、数回銃声を立て続けに聞き、なーんとなく違いがあるような気がしてきました。

でもね、やっぱり似ているよ。誰かは「銃声はパンクよりも軽い音がする」なんていっておりましたが、実際私が聞いた銃声は想像していたのよりは軽い音ではなかったわけで…。

そうそう、夜中の3時頃、子供が頭がいたいと起きてきたので、その後何となく眠りにつけず、ポーっとしていたら「パーン、パーン、パーン」という音が響き渡り、寝ぼけた頭で「さて、これはパンクか銃声かどっちかな?

音は軽くなかったけど、3発連続かぁ、でも誰かがいたずらでタイヤを3つパンクさせたのかな?「さっきカーアラームもなってたしね。」なんて、考えているうちに眠りにつき、翌朝はそのことも忘れ、普段どおりの生活。

午後、同じコンパウンドに住む友人から電話があり、「昨日3時ごろの音は、銃声。コンパウンド内に強盗が入った模様。犯人は捕まっておらず、まだどこかに潜んでいる可能性あり。」とのこと。えーっ!どういうことよぉ! とりあえず、夫に電話し、事の真相を確かめてもらうことに。 主婦ネタは結構ガセネタも多いので、取り乱す前に、事の真相を確認せねば。

結局は、コンパウンドが面している通りにカージャック犯を追い込んだ警官が3発発砲。その流れ弾がコンパウンド内の1部屋に当たり、ガラスが割れた。ということだったのだけれど、これでも充分、いやーな感じ。

割れた場所?道路から100mは離れているし、日本人家族も多く住んでいる棟なので、普段、人のお宅に行くのにその廊下歩いたりするのよね。歩いていたときに、流れ弾飛んできたら重症か死亡だろうなぁ。

そして、ナイロビ全域でよくあるのが車のサイドミラーをかぽっと外して盗んでいく事件。2・3秒の出来事らしい。近所でも多発地帯があって、私がいる1年の間でも日本人も数人被害にあっている。命でなければ、ミラーくらいくれてやる!などと思いながら、いつもは運転してる私でも、最近ちょっと嫌なことが起こった。

警官が、ミラー犯に対して発砲したのだ。これも、うちから銃声がよく聞こえた。

金曜日夕方5時。

この後、毎日通るその場所でミラー犯らしき人を見かけると、警官の流れ弾が怖くておびえるようになってしまった。あんたたち、どっか行きなさい!一緒に死にたくないからねっ!と本当に迷惑。

ちなみに、特に夜間、タイヤがパンクしても止まってはいけない。赤信号でも、車が来ないのに止まって待っているのは好ましくない。強盗に遭うのを避けるためには、夜は止まらない。これ、ナイロビの常識ね。

ミラー犯、銃、と言って思い出すもうひとつの出来事。これもまた毎日通る場所。夕方には渋滞になる。そしてその渋滞で身動きできない状況の中で、またもやミラー犯たちは動き出す。そのとき、知り合いは、自分の車のミラーを盗ろうとしている奴がいるのには気がついたものの、もちろん何もすることが出来ない。だって、相手はもしかしたら銃を持っているかもしれない、もしかしたら実はドアを開けるのをまって、カージャックしたいのかもしれない、でしょ。

そうこうしているうちに、前の車から運転手が出てきて、ミラー犯の足元に銃をぶっぱなし、ミラー犯は逃げて行ったそうな…。護身用の銃を持っていたのね、その人。用途は間違ってはいないんだけど…、あんまりうれしくないなぁ、そういう出来事。

ケニアでの常識「相手を怒らせてはいけない」という言葉を、改めて心に刻んだのでした。