ベージュのブロックに救われたお正月。異国の地での生活って難しい。

もう1月半ばですが、お正月のふりかえりをしたいと思う。今年は初めて家族とも日本とも離れて過ごして、正直、過去一で自分にとってキツいお正月になった。

スウェーデンにあるパートナーの実家で年を越した。義母が一人暮らしを始めて初めてのホリデーシーズンだったので、寂しくさせないためにクリスマスとお正月を義実家で過ごすことを決めていた。1月1日は義母の誕生日でもあるので、私も普通に納得していた。けど実際に過ごしてみると、お正月は私にとって思っていたより大切だったことが分かった。

オランダ人家庭である義実家では、お正月を重要視しない。クリスマスはちゃんとお祝いするけれど、お正月は義母の誕生日というだけでそれ以外は普通の日。

一方で、海外転勤族ではあったものの家庭内は日本の文化で育った私は、お正月だけはちゃんと毎年お祝いしていた。しめ飾りやかがみもちで家はお正月ムード。大晦日は好きなだけお菓子を食べていい決まりだったので事前に買いだめして、夕飯はホットプレートで焼肉。年越しそばを食べて、家族でカラオケをしたり紅白を見たり、ボードゲームをしたりしながら年越しの瞬間を待つ。「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」だけは家族内でも敬語だった。

元旦はちゃんと朝早くに起きて、きれいな服に着替えてメイクもして、おせちとお雑煮を朝ごはんとして囲む。去年の目標を達成できたかを確認して、今年の目標を立てて、お年玉をもらう。家族写真もこの辺で撮る。おせちの品目の意味を調べたりしながらゆっくり朝ごはんを食べたら、初詣に行く。町全体が新年ムードなのを感じながら、近所の神社に歩いていく。新年セールのために買い物に行くこともある。あぁ、書いていて寂しくなってくるくらい、お正月って最高に幸せだったんだなぁ。

でも今年は、朝早く起きても誰もほかに起きてこない。SNSを見ると日本でお正月を楽しんでいる投稿が目に入る。紅白こんな感じだったんだ、とか、おせちいいな、とか。おせちなんて味はそんなに好きでもないのに、やっぱりお正月ムードになるために必要だったんだなぁ。

しかも今年は、石川県の地震が元旦に起きた。私は起きてすぐスマホを確認して地震のニュースを知った。家族はみんな無事だったけれど、日本人として心配だし不安だし、でもこの感覚は海外の人には伝わらない。日本では大きな災害が起きると日本人みんなが心配になると思うけど、これが伝わらないってなんか寂しい。

さすがに悲しくなってきて、まだ寝てたパートナーを起こして泣きついた。こんなにお正月が君にとってこんなに大切だって知らなかったよ、言ってくれればよかったのに、と言われたけど私も知らなかった。

パートナーのすすめで自分の家族に電話することになった。母と姉は今一緒に住んでいるので、ちゃんとお正月をしていた。おせちも、お屠蘇も、お雑煮もあって、心からうらやましかった。でも「お正月」の感覚を共有できたのがうれしかった。

そして、最終的に私の気分を上げてくれたのは、4年前の自分だった。義母が「棚にあるベージュのブロック、あなたが前にくれたものだけどどうやって使えばいいのかわからないのよ」と言う。カレールウかな、なんて思いながら棚を開けると、なんと、お餅だった。4年前、初めてスウェーデンに来たときにお土産として渡したものだった。一目見てテンションが上がった私は早速食べた。2021年に賞味期限は切れていたけれど、味はちゃんとお餅。醤油だけかけて食べた。一口食べた瞬間「これこれ!!」となった。味覚と記憶って本当に結びついている。

来年はちゃんとお正月を祝おうと思う。母の家に遊びに行ってもいいし、自宅でもいいけど、カップ麺でもいいから年越しそばを食べて、お餅も用意する。スウェーデンでもこれくらいなら手に入るはず。本当はもっと手に入るはずなんだけど、まだ慣れていないので勝手がわからない。おせちはもうちょっと慣れてから頑張る。

異国の地で、育ってきた文化が違うパートナーと生活するって、こういう難しさがあるんだと知ったお正月。自分にとって「日本の文化」って思った以上に大切だったんだと知った。私は宗教的ではないし普段から神に祈るなんてしないのに、初詣に行けないことで神様にご挨拶できなくてソワソワしたし。でももうスウェーデンに住む以上、日本の文化を自分の家に連れてこれるのは私自身だけなので、ちゃんと意識しないとな。勉強しよう。